top of page
HO4:緑園(ミドさん)「~だ」が口癖。

 あなたの本名は『夏空 碧(なつぞら みどり)』だ。東京の病院で働いている。あなたは、人の生命を扱う医者という職業のせいか、他人の感情に対してあまり感化されなくなっていった。患者に同情していては身が持たない。自分とは赤の他人が苦しんでいるだけだ。そう考えることが増え、次第に家族に対しても冷たくなった。そのせいだろう。妻はあなたとあなたの娘の元から去った。妻はあなたのことを冷たいと言っておきながら、麦わら帽で顔を隠し、ひたすら泣いていた娘も置き去りにしているところをみると、結局人間は自己中心的な生き物なのだろうと思えた。……そういえば、麦わら帽は妻が渡したのだったか?よく覚えていない。

 ある日娘の「茜」が病気で倒れた。正直なところ娘のことをよく見ていなかった。医者であるがゆえにその病気の深刻さがあなたには理解できた。意識がはっきりしながら死に向かう。そんな病気だ。娘はこれから痛みに耐えながら2~3年を病院で過ごすことになるだろう。冷血漢のはずのあなたが、なぜか涙を流していた。

 あなたは娘の願うことは何でもやった。娘にVRが欲しいと言われたためVR機器を買った。それに娘は熱中したようで、VR世界で話すうち友達もできたようだ。見舞いにも来てもらったらしい。娘と直接話すのは恥ずかしかったあなたもVR機器をもう一台買い、「緑園」として娘である、「アカ」と話すようになった。緑園が親であると伝えることはせず、仕事の空き時間を見つけてはアカと話し、アカの所属するVR団体にも入った。アカにとって緑園は相談相手として話しやすかったようで、いろいろ話を聞くことが出来て嬉しかった。

 だが、毎日娘の容態は悪くなっていく。以前、こっそり病室に訪れたあなたが見てしまったのは「痛い、痛い」と一人苦しむ、愛する娘の姿だった。しかし茜はあなたに気づくと笑顔と共に穏やかなふりをして帽子をプレゼントしてきた。……この病気は死ぬほど辛いはずなのに。あなたは貰った帽子を被り、涙を隠した。

人の苦しむ姿を見るのは平気だった。ただ、自分の娘が苦しむ姿は見ていられなかった。貰った帽子は病院内でも被り続けた。あなたの表情や、頭の中で考えていたことを悟られたくなかったからだ。

 娘に対して何もしてやれなかった自分ができる唯一のこと。安楽死させてやりたいという身勝手な考えを。

 

過去のタイムライン

17:00頃

 302号室の一番窓側のベッドに歩いて行き、茜に「茜の体は……もう……限界らしい」と嘘を伝えた。最愛の娘の顔がどうなっているかはとても見ることが出来なかった。逃げるようにして部屋から出た。その後、アカがログインするかもしれないと考え、病院の休憩室でヘッドギアを被り、ロビーで白田と話していたが、急に肩をぽんぽんと叩かれた。何かあったのかと思い振り返ると休憩室に入ってきたナースだった。どうやら子供が風船を手放してしまったため、取るのを手伝ってほしいと言ってきた。白田に断りを入れてヘッドギアの電源を切り、風船を取りに外へ出た。木に絡まった紐を取ろうと努力したが、誤って風船を空に飛ばしてしまった。

18:30頃

 子供を宥めるのに時間がかかった。休憩室に戻り、今日のために準備した楽に死ねる毒薬を荷物から取り出す。

そのまま302号室に入り、茜のベッドまで歩く。驚いたことにベッドには茜と、知らない人物が横たわって、黙っていた。二人ともSVRを付けて何かしているのだろうか。……だが、これは幸運だ。この人物に罪をなすりつけることができるかもしれない。茜の点滴に毒薬を注射していると、茜の枕元に手紙のようなものが置いてあることに気づいた。茜の気持ちが気になったため手紙をポケットに入れ、そのまま302号室を去った。

19:00頃~

 茜の手紙には「このワールドに初期メンバーで行って欲しいな」と書かれていた。試しに一人でワールドに飛んでみたが、丁度6人が椅子に座らないと何も起こらないようだ。……気になる。私が呼べば何か感づかれるかもしれない。匿名で運営メンバー全員にこのメッセージを送りつけた後、SVRにログインしモモと話していた。何やら今日は夕日が沈むのを見る会と言うものが開催されていたらしい。

ヒント:あなたは犯人だ。18:30頃から病室に居たこと、皆に連絡したことは言わないほうがいいだろう。

bottom of page